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歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師』新国立劇場 (2014年5月27日) [感動のオペラ]

『カヴァレリア・ルスティカーナ』
 作曲=マスカーニ
『道化師』
 作曲=レオンカヴァルロ

 指揮=レナート・パルンボ
 演出=ジルベール・デフロ
 東京フィルハーモニー交響楽団
 新国立劇場合唱団
 出演=
『カヴァレリア・ルスティカーナ』
 サントゥッツァ……ルクレシア・ガルシア
 トゥリッドゥ……ヴァルテル・フラッカーロ
 ローラ……谷口睦美
 アルフィオ……成田博之
 ルチア……森山京子
『道化師』
 カニオ……グスターヴォ・ポルタ
 ネッダ……ラケーレ・スターニシ
 トニオ……ヴィットリオ・ヴィテッリ
 ペッペ……吉田浩之
 シルヴィオ……与那城敬
 TOKYO FM少年合唱団
                  ☆
 テレビで何度か観た『カヴァレリア・ルスティカーナ』と『道化師』。どちらも男と女の愛と恋と嫉妬が描かれ、悲劇で終わるドラマティックなストーリー。他のオペラに比べて短時間だが、音楽は美しく、感情移入しやすい。舞台セットも良かったし、歌手もオーケストラも素晴らしかった。
 特に、『カヴァレリア・ルスティカーナ』でトゥリッドゥを歌うテノールのヴァルテル・フラッカーロ。新国立劇場は5回目の出演ということだが、私は『オテロ』と『イル・トロヴァトーレ』を観て、今回が3度目。男性的で力強くも輝かしい歌声を堪能できた。
『道化師』は、やはり一番聴きたかったアリア、『衣装をつけろ』。カニオ役のグスターヴォ・ポルタ。初めて聴いたが、とても良かった。歌唱、演技、ルックス、すべていい。他の公演も観てみたいと思った。
 ほぼ満足の公演だったが、字幕翻訳が少し不満だった。たとえば『カヴァレリア・ルスティカーナ』のラストで、遠くで絶叫する女性が、「トゥリッドゥさんが殺された!」に、私はコケた。「さん」は不要。字幕を一瞬にして眼にして脳にインプットされる時、「トゥリッドゥが殺された!」と「トゥリッドゥさんが殺された!」は、違うのである。「トゥリッドゥが殺された!」でなくては、シマラナイというか、コケてしまうほど違和感がある。字幕もオペラを観る楽しみの私にとっては。他にも何箇所か、コケてしまった字幕があった。主観的にだが、字幕翻訳のセンスのなさに落胆。
 オペラに精通した観客たちにとっては、字幕なんて意味が通じればいいという人が大半だと思うが、私にとって字幕は大事。文字を読むのが速いので、パッと映像のようにインプットされ感性を刺激される。多分、文字を読むのが速くないオペラ・ファンたちは、字幕は気にならないに違いない。ゆっくり読んで行けば「さん」などあってもなくても大差ないというより同じに違いない。多数の観客に合わせた字幕翻訳になっているのだと思う。
 ともあれ、生で初めて観た『カヴァレリア・ルスティカーナ』と『道化師』。演出や舞台セットも良かったし、東京フィルハーモニー交響楽団もドラマティックな美しい音楽を聴かせてくれたし、キャストも合唱団も素晴らしく、さらに舞台が見やすい席だったこともあり、ほぼ満足できて久しぶりの生オペラを楽しんだ。




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歌劇 ホフマン物語 新国立劇場 (2013年12月10日) [感動のオペラ]

 作曲=ジャック・オッフェンバック
 指揮=フレデリック・シャスラン
 演出=フィリップ・アルロー
 出演=
 ホフマン……アルトゥーロ・チャコン・クルス
 ニクラウス/ミューズ……アンジェラ・ブラウアー
 オランピア……幸田浩子
 アントニア……浜田理恵
 ジュリエッタ……横山恵子
 リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット……マーク・S・ドス
 アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ……高橋 淳
 ルーテル/クレスペル……大澤 建
 ヘルマン……塩入功司
 ナタナエル……渡辺文智
 スパランツァーニ……柴山昌宣
 シュレーミル……青山 貴
 アントニアの母の声/ステッラ……山下牧子
 東京フィルハーモニー交響楽団
 新国立劇場合唱団
          ☆
『ホフマン物語』を生で観たのは初めてだった。
 照明を含めて舞台装置や衣装の色彩が鮮やかなため、演出の意図が強調され過ぎているような感じがしなくもなく、肝心なホフマンのキャラクターがあまり伝わってこなかった。ホフマンだけでなく他の登場人物たちも、それぞれの個性が際立って感じられないのは、舞台に独特の色彩があふれ過ぎていたためのような気がした。キャストとキャラクターと歌と物語を引き立てるような舞台セットや衣装が私の好みである。
 ホフマンを歌ったアルトゥーロ・チャコン・クルスは、初めて聴いた。若い詩人ホフマンだった。シンプルな黒の衣装が、よく似合っていて、ルックスも雰囲気も魅力的だったが、テノール独特の甘さと艶と伸びやかさが、あまり感じられなかったことが残念だった。
 オランピアの幸田浩子は高音の歌声も演技もそれなりに良かったし、楽しめた。けれど、どこか観念的な自動人形に感じられ、もっと愛らしいヴィヴィッドな生命感に満ちた自動人形を期待していたので、少しもの足りなかった。
 舞台の独特の色彩のせいか、最後に自殺する詩人ホフマンの人生があまり浮き彫りにされていないように感じられた。
 この公演と、テレビ放送と、DVDで観た『ホフマン物語』。プラシド・ドミンゴがホフマン役のDVDが一番感動的で楽しめたが、オーケストラは言うまでもなく生で聴いたこの公演が一番素晴らしかった。
 


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歌劇『椿姫』 ハンガリー国立歌劇場 (東京文化会館・貸切公演・2013年6月21日14時開演) [感動のオペラ]

 作曲=ジュゼッペ・ヴェルディ
 原作=アレクサンドル・デュマ・フィス
 指揮=ドモンコシュ・ヘヤ
 演出=アンドラーシュ・ベーケーシュ
 出演=
 パリの高級娼婦ヴィオレッタ……ポリナ・パスティルチャーク
 プロヴァンスの青年貴族アルフレード・ジェルモン……ペーター・バルツォ
 アルフレードの父ジュルジュ・ジェルモン……アナトリー・フォカノフ
 ヴィオレッタの友人フローラ……エリカ・ガル
 ヴィオレッタの召使いアンニーナ……エーヴァ・バラトニ
 ガストン子爵……ティボール・サッパノシュ
 ドゥフォール男爵……ゾルターン・ケムノン
 ドビニー公爵……チャバ・セゲディ
 医師グランビル……シャンドル・エグリ
 ハンガリー国立歌劇場管弦楽団
 ハンガリー国立歌劇場合唱団
 ハンガリー国立歌劇場バレエ団
          ☆
 期待以上に最高に素晴らしい公演だった。指揮も演出も美術も衣装も出演者たちも完ぺきと言いたいくらい、予想以上、イメージ以上の素晴らしさだった。〈クラブツーリズム〉という旅行やイベントの企画会社主催の貸切公演で、友人からの誘いである。ハンガリー国立歌劇場来日公演のS席が17000円と比較的安かったので喜んだが、夜の公演の注目人気歌手ではなかった。
 けれど、ヴィオレッタを歌ったポリナ・パスティルチャークが、若く才能ある魅力的な超美貌のソプラノ歌手で、もう最高に酔わされた。透明感に満ちた美しい歌声。美しい容姿。演技も素晴らしくて、その歌声とともにヴィオレッタの感情の揺れが鮮烈に伝わってきた。
 アルフレードを歌ったペーター・バルツォは、私のイメージ以上の素敵なアルフレードだった。何よりアルフレードというキャラクターに不可欠の甘さのある若々しい美男テノール歌手であることがうれしかった。その甘く伸びやかな歌声に、深く深く魅了された。
 それぞれのアリアはもちろん、2人が寄り添っての2重唱にも酔わされた。2人とも、やや小柄のように見えたが、ウットリするほど、とてもよく似合うカップルだった。『ロメオとジュリエット』や『リゴレット』も聴きたくなるくらいだった。
 オーケストラも美しく叙情的で情熱的。舞台装置は現実離れした夢の世界のような色彩の美しさとセンスの良さ。さらに衣装のどれもが最高に素敵だった。 
 第2幕第2場のフローラのサロンの、アルフレードの激怒と嫉妬のシーンが特に好きなシーンだが、ペーター・バルツォとポリナ・パスティルチャークの歌声と演技に、感情を揺さぶられて胸が熱く熱くなってしまった。
 ダンス・シーンも、スペインの踊りを表現したハンガリー国立歌劇場バレエ団のダンスが美しく独特で魅力的で深く堪能できた。
『花から花へ』『さらば、過ぎ去りし日』の他にも酔わされる名アリアが何曲もあるこのオペラを、テレビやDVDではいろいろ観て聴いたが、やはり言うまでもなく生の公演は夢の世界のような感動も陶酔ももたらしてれる。若く、みずみずしく、才能あふれた歌手たちによる、フレッシュなオペラ『椿姫』という感じで、中年以上の有名歌手たちとは違った魅力に、終演後も感動の余韻に浸ったし、カーテンコールでは手が痛くなるほど拍手を送った。
 ハンガリーには才能あるオペラ歌手が多くいると何かで読んだことがあるが、そのとおりかもしれないと思い、ハンガリー国立歌劇場来日公演『椿姫』を生で観た幸運をつくづく感じた。




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華麗なるオペラの世界 歌劇 カルメン ミラノ・スカラ座  (イタリア・2009年12月7日) NHK BS [感動のオペラ]

 作曲=ジョルジュ・ビゼー
 指揮=ダニエル・バレンボイム
 演出=エンマ・ダンテ
 出演=
 ロマの女カルメン……アニタ・ラフヴェリシヴィリ
 竜騎兵伍長ドン・ホセ……ヨナス・カウフマン
 ドン・ホセの許嫁ミカエラ……アドリアーナ・ダマート
 闘牛士エスカミーリョ……アーウィン・シュロット
 竜騎兵隊長……ガボール・ブレッツ
 竜騎兵士官モラーレス……マティアス・ハウスマン
 カルメンの友達フラスキータ……ミシェル・ロジェ
 カルメンの友達メルセデス……アドリアーナ・クセロヴァ
 密輸入者ダンカイロ……フランシス・ドゥジアク
 密輸入者レメンダード……ロドルフ・ブリアン
 案内人……カルミネ・マリンゴーラ
 ミラノ・スカラ座管弦楽団
 ミラノ・スカラ座合唱団

 カルメンを歌ったアニタ・ラフヴェリシヴィリがとても良かった。私が好きな数か所のシーンで、期待を裏切らない歌唱と演技で楽しまされた。私がイメージするカルメンに、かなり近い感じということもある。やや肥満気味体型だが、カルメンはスリムよりは豊満気味のほうがいい。男を惑わす魔性の女の一面も伝わってきたし、ドン・ホセを愛する感情も、心変わりして闘牛士エスカミーリョを、たとえ死んでもドン・ホセに殺されても好きだという激しい恋に身を灼く女、が感動的に伝わってきた。
 さらに、ドン・ホセを歌ったヨナス・カウフマンの素敵なこと!! もう、う~っとり、だった。ヨナス・カウフマンは年齢を重ねるほどに男としての魅力を増していくタイプと思った。ドン・ホセは田舎出身の純朴な兵士だが美青年であって欲しい。エスカミーリョは違うタイプの美青年だったら、もっと良かった。私のイメージでは、カルメンはメンクイなのである。いい男、素敵な男に、惚れる。男なら誰でもいいというタイプではないのだ。
 第2幕の居酒屋で再会したカルメンが、ドン・ホセの上に跨(またが)るようにして歌うシーンは、もう、この上なく素晴らしかった! 欲を言えばヨナス・カウフマンの演技に、表現がもう少しオーバーなくらいの激しさと熱っぽさがあったら、もっと素晴らしかったと思うが、生ではなくテレビで観るからのような気がした。
 さらに欲を言えば、第1幕のカルメンの衣装は興醒めである。女工を表現している意図はわかるが、歌手の体型の短所を強調させるような、身体にフィットしたワンピースふう作業服にしなくてもいいのにと思った。第2幕以降はカルメンにふさわしい衣装で安堵した。
 期待以上に楽しめた『カルメン』だった。『カルメン』は好きなオペラなので、期待して裏切られると失望が大きいが、この公演をテレビで観終えた後には昂奮に近い感動の余韻があった。   

プレミアムシアター ヴェローナ野外オペラ・フェスティバル2012『アイーダ』 (NHK BS) [感動のオペラ]

 歌劇 アイーダ ヴェローナ野外劇場 (イタリア・2012年6月23日)
 作曲=ジュゼッペ・ヴェルディ
 指揮=ダニエル・オーレン
 演出=ジャンフランコ・デ・ボジオ
 出演=
 エジプト王……ロベルト・タリアヴィーニ
 エジプトの王女アムネリス……アンドレア・ウルブリヒ
 エチオピアの王女アイーダ……へー・ホイ
 将軍ラダメス……マルコ・ベルティ
 祭司長ランフィス……フランチェスコ・エルレロ・ダルテーニャ
 エチオピア王アモナズロ……アンブロージョ・マエストリ
 ヴェローナ野外劇場管弦楽団
 ヴェローナ野外劇場合唱団
     
 最初、舞台セットの素晴らしさに感動した。『アイーダ』は生の公演を見ていないためか、オペラ作品として特に好きというほどではないのに、舞台装置をひと眼見た瞬間、オペラ『アイーダ』の世界へ、すうっと誘い込まれるような心地がした。この舞台を生で観たら、どんなに素晴らしいことかと思った。まさに私にとってのオペラ鑑賞の理想と言えるような、舞台装置を眼にしたとたん、現実から夢の世界へ引き込まれることの心地良さと醍醐味を味わえるような気がした。
 そのオペラの世界へ、舞台装置を見ただけで誘い込まれるなんて、日本の公演ではあり得ないことなのだろうか。それとも、いつか、そんな舞台を生で観られるのだろうか。やはり日本では無理なのかもと、そんなことを考えたりした。
 ヴェルディの音楽は叙情に満ちて美しく、どの歌手も良かったが、特にアイーダを歌ったへー・ホイの歌声に魅せられた。何度かテレビで『アイーダ』を観た時は、エジプト王女アムネリスのキャラクターとアリアが好きで、歌手も印象的だったが、この公演で最も印象に残ったのは、へー・ホイだった。検索して調べると、 欧州在住の中国人ソプラノ歌手ということだが、新国立劇場でも歌っていることを知った。いつか生で聴いてみたいと思った。

歌劇 愛の妙薬 (新国立劇場・2月12日) [感動のオペラ]

〈作曲〉ガエターノ・ドニゼッティ
〈指揮〉ジュリアン・サレムクール
〈演出〉チェーザレ・リエヴィ
〈出演〉
 地主の娘アディーナ……ニコル・キャベル
 青年農夫ネモリーノ……アントニーノ・シラグーザ
 インチキ薬売りドゥルカマーラ……レナート・ジローラミ
 守備隊の軍曹ベルコーレ……成田博之
 アディーナの友達ジャンネッタ……九嶋香奈枝
〈管弦楽〉東京交響楽団
〈合唱団〉新国立劇場合唱団

 期待以上に、東京交響楽団が素晴らしかったこと! 生のオペラを観る楽しみは、歌手たちの他にやはりオーケストラにも酔わされることが私にとっては大事とつくづく感じた。
 また、新国立劇場合唱団の素晴らしさといったら、もう、この上ないと言いたくなるほど魅了された。今まで、オペラの合唱はアリアを引き立てるとか物語の説明とか、メリハリやつなぎのように感じられたりで、ともすれば退屈な時もあったりしたが、この公演の合唱は本当に素晴らしかった。生のオペラ公演で、生のオーケストラに魅了された経験は何度もあるが、生の合唱団にこれほど感動させられ楽しまされたのは初めてだった。
 指揮のジュリアン・サレムクールの感性、才能ということもあるのかもしれない。ドニゼッティの音楽の美しさも、あらためて感じさせられた。
 舞台セットは明るくカラフルで、『愛の妙薬』という他愛(たわい)のない物語を盛り上げている感じでそれなりに良かったが、第1幕の巨大な本はオペラでよく出てくる気がしたけれど、第2幕第1場は可愛らしくて微笑まされるようなセットで楽しめた。
 このオペラのただ1曲の名アリア『人知れぬ涙』、このアリアが聴きたかったとワクワクした。3年前、新国立劇場でこのオペラを観た時、ジョセフ・カレヤの素晴らしい歌唱に深く魅了されたことを思い出した。CDで聴いていたパヴァロッティとは違った甘さと男っぽさがミックスし叙情に満ちた輝かしい歌唱に酔わされたことを忘れられない。
 インチキ薬売りドゥルカマーラを歌ったバリトン歌手のレナート・ジローラミがとても良かった。男性的でセクシーな声。歌唱にメリハリもあって人物表現がよく伝わってきたし、コミカルな演技にも楽しまされた。今後も花形テノールよりバリトンのほうが好きになりそうな気がしたほどだった。男性歌手の歌唱には、やはり、終始、“男性”を感じたい。
 ただ、字幕で、ドゥルカマーラを「先生」と訳していたのは全く興醒めだった。コミカルな楽しさを盛り上げるためという意図も感じられなくもないし、愛称として「先生」と訳したとも考えられなくもないけれど、何故、前回と同じ「薬売り」とか「ドゥルカマーラさん」では駄目なのだろう。1度や2度ではなく、何度もこの「先生」の字幕が出てくるので、他の字幕までセンスのなさを感じてしまいそうだった。再演だが前回と違う工夫を凝らしたと強調するためだろうか。
 ともあれ、初めて観たレナート・ジローラミの歌唱と演技を楽しめたことは幸運だった。レナート・ジローラミを検索したら、『ドン・ジョヴァンニ』の従僕レポレッロも得意らしい。あの面白いキャラクターを歌って演じたらきっと楽しめると想像され、いつかレポレッロを歌うレナート・ジローラミを観てみたいと思った。
 アディーナ役のニコル・キャベルは昨年の新国立劇場『ドン・ジョヴァンニ』のエルヴィーラ役の時も感じたことだが、時々、声にか発声にか一種の癖のようなものが感じられ、それはあまり心地良く聴けなかった。かなり豊かな声量と感じられるが、私は熱烈なオペラ・ファンというわけではないので、声量と巧みな歌唱だけでは、満足できない。歌手の声量がなくても楽しめる時もある。
 ネモリーノ役アントニーノ・シラグーザはいかにも人気歌手らしく歌い慣れている演じ慣れているという余裕のようなものが伝わってきた。公演最終日で少し疲れているように感じられなくもなかった。
 キャベルとシラグーザは恋人同士の役だが、寄り添ったり抱擁したりするシーンではとても恋人同士に見えず、姉と弟のような印象だった。女性歌手が男性歌手より頭1つ分背が高いためもあるが、私はそのような男女の身長差でキャストというよりキャラクターのビジュアル面を無視したキャスティングには失望させられる。何度か一緒にオペラを観た女友達を含め大半のオペラ・ファンはカップルの身長差やキャラクターのビジュアル面は気にならないのが不思議。もっともその友達は時々、居眠りしていた。居眠りしながら聴くのならビジュアル面が気にならないのは当然のことと、おかしかったし納得した。『愛の妙薬』は喜劇的なオペラだから、あえてそうしたのかもと思うことにした。
 滅多にないことだが、短編締切日まで1週間、メモを取っただけで1枚も書き出せずに12日になってしまい、新国立劇場へ向かう時いつものように足取り軽くルンルン気分というわけにはいかなかった。けれど公演を観ている間は完全に忘れていられた。終演後、いつもはカーテンコールに拍手を送るけれど、我れに返って現実に引き戻され館内を出たら、まるで映画館と錯覚しそうなほどゾロゾロと多くの観客が私と同じように用事があるらしくカーテンコールの拍手を省略して劇場を後にしていた。かなり空席が目立つ日だったこともあり、少ない拍手が落胆させたかもと思うと、一瞬、引き返したくなった。指揮者、東京交響楽団、新国立劇場合唱団、レナート・ジローラミその他歌手たちに拍手をいっぱい送りたかったが残念だった。
〈苦あれば楽あり、楽あれば苦あり〉。翌日からプレッシャー&ストレスの1週間が待っていた。



愛の妙薬 新国劇場.jpg




歌劇 トスカ 新国立劇場公演 (2012年11月20日) [感動のオペラ]

 作曲=ジャコモ・プッチーニ
 指揮=沼尻竜典
 演出=アントネッロ・マダウ・ディアツ
 出演=
 トスカ……ノルマ・ファンティーニ
 カヴァラドッシ……サイモン・オニール
 スカルピア……センヒョン・コー
 アンジェロッティ……谷 友博
 スポレッタ……松浦 健
 シャルローネ……峰 茂樹
 堂守……志村文彦
 看守……塩入功司
 羊飼い……前川依子
 東京フィルハーモニー交響楽団
 新国立劇場合唱団
               ☆
 初めて観た生の公演の『トスカ』。幕が開いた時の舞台装置を見て、『トスカ』の世界に引き込まれそうなムードに包まれ、ワクワクさせられた。
 トスカを歌ったノルマ・ファンティーニは美貌のソプラノ歌手で艶のある美しい声、演技も歌も素晴らしくて魅了された。やや、ふくよか体型が気になったが、スカルピアの邪(よこしま)な欲望の対象と思えば肉感的な身体つきがふさわしいかもと思い直した。カヴァラドッシのサイモン・オニールも、スカルピアのセンヒョン・コーもそれなりに良かった。オーケストラも感情表現豊かに感じられた。
 テレビとDVDで『トスカ』は何度か観ているし、CDでソプラノ&テノール歌手のアリアを何度も聴いているため、感情移入もしやすく、約3時間が短く感じられるほど堪能できた。


新国立『トスカ』 2012.11.jpg



歌劇 夢遊病の女(全2幕) 藤原歌劇団公演 新国立劇場 (2012年9月8日) (NHK BS) [感動のオペラ]

 作曲=ヴィンチェンツォ・ベルリーニ 
 指揮=園田隆一郎
 演出=岩田達宗
 出演=
 アミーナ……高橋薫子
 エルヴィーノ……小山陽二郎
 テレーザ……森山京子
 ロドルフォ伯爵……妻屋秀和
 リーザ……関真理子
 アレッシオ……和下田大典
 公証人……藤原海考
 藤原歌劇団合唱部
 東京フィルハーモニー交響楽団
          ☆
 久しぶりにテレビでオペラを最後まで観た。テレビでオペラの公演が放送されても、最後まで観ることは、あまりない。30分か1時間で中断してしまう。たとえば舞台装置や衣装なども含めて現代に置き換えてある演出だと、オペラというよりミュージカルのような感じがして、イマイチ楽しめないことが多い。
 けれど、この公演は予想以上に素晴らしかった。藤原歌劇団公演を初めて観たが、こんなに素晴らしいなら、新国立劇場へ観に行きたかったと思った。アミーナを歌うソプラノ歌手高橋薫子がとても良かった。美しく澄んだ声で高音の歌声コロラトゥーラを聴く醍醐味を味わった思いがした。日本にもこんなに素晴らしいソプラノ歌手がいるなんてと驚きだった。ただ、エルヴィーノの小山陽二郎も良かったけれど、もう少しオーバーなほどの感情表現をしてくれたほうが楽しめるような気がした。また、アミーナの高橋薫子との2重唱は、もっと盛り上がって欲しいと期待したが、生ではなくテレビのためか、期待どおりというほどではなかった。
『夢遊病の女』はテレビで放送されたのを2度観たが、イマイチ感情移入できなかった。ストーリーにこだわり過ぎていたからだった。婚約者のいるアミーナが、他の男性の部屋のベッドへ行くという夢遊病の行為を、考え過ぎてしまう、こだわり過ぎてしまうからだった。そのストーリーが頭の中にイン・プットされているため、たとえ夢遊病でもロドルフォ伯爵に潜在感情で惹かれているのではと、勝手に想像したり期待したりしてしまうので、何故、夢遊病なら、その裏切りが許され、誤解が解けてハッピー・エンドなのと不思議で、アミーナは純真な女という設定だが本当は秘められた感性を持つ女なのか、そのキャラクターがイマイチつかめなくて楽しめなかった。コロラトゥーラのアリアをたくさん歌ってくれてもである。
 他のオペラでもだが、ついキャラクターやストーリーにこだわってしまうのは、映画を多く観ているせいかもしれない。オペラと映画は違う、ということが、わかっていてもである。けれど、今回は違った。
(オペラはストーリーじゃないわ。この『夢遊病の女』は、ベルリーニの美しい曲と歌手のアリアを聴く魅力のあるオペラなんだわ)
 そう気づいた。3度目にテレビで『夢遊病の女』を観て、ようやく理解できたというか、ソプラノ歌手高橋薫子の美しいコロラトゥーラを聴いたため、『夢遊病の女』というオペラの魅力を知った。テレビでこれほどの感動が得られる『夢遊病の女』を、いつか生で聴きたいと思った。

歌劇 ドン・ジョヴァンニ 新国立劇場 (2012年4月24日) [感動のオペラ]

 作曲=ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
 指揮=エンリケ・マッツォーラ
 演出=グリシャ・アサガロフ
 出演=
 ドン・ジョヴァンニ……マリウシュ・クヴィエチェン
 ドンナ・アンナ……アガ・ミコライ
 ドンナ・エルヴィーラ……ニコル・キャベル
 ドン・オッターヴィオ……ダニール・シュトーダ
 ツェルリーナ……九嶋 香奈枝
 マゼット……久保 和範
 騎士長……妻屋 秀和
 レポレッロ……平野 和
 東京フィルハーモニー交響楽団
 新国立劇場合唱団
                         ☆
 テレビで4回観た『ドン・ジョヴァンニ』を、生で初めて観た。期待以上に、とても素晴らしい公演だった。ドン・ジョヴァンニを歌ったマリウシュ・クヴィエチェンが、とても素敵で、セクシーで男性的で、ほどよく悪人貴族っぽく、豊かな表現の歌声が魅力的な、美しいバリトンだった。レポレッロも騎士長もエルヴィーラもオッターヴィオも、それなりに良かったが、ツェルリーナはイメージと違っていたのが残念だった。
 私のイメージするツェルリーナは、溌剌(はつらつ)として、キュートで、リズミカルな歌い方で、明るくて、コケティッシュで、
(ドン・ジョヴァンニ様に、ちょっぴり惹かれちゃったわ、うふ)
 と、内心、呟くみたいな愛らしい花嫁。現実にはあり得なくても、それがオペラの楽しさ。けれど、悲愴感の漂う感じの歌声には、違和感があった。演出や歌手によって、キャラクターの解釈と表現は違うものと、つくづく感じた。3人のソプラノのキャラクターは、それぞれの個性が際立ち異なっているほうが、私には楽しめる。
 ソプラノで最も素晴らしかったのが、ドンナ・アンナのアガ・ミコライ。何て美しい歌声! 感情移入もし、陶酔させられどおしだった。この上なく美しくて透明感のある声。情感に満ちた気品のある歌声と、そのしぐさや表情に、あんな美しいソプラノ歌手がいるなんてと驚きだった。テレビで観たどの時も、ドンナ・アンナのキャラクターがイマイチ好きになれなかったが、アガ・ミコライの歌と演技で魅了され、初めてドンナ・アンナの魅力にも気づかされた。
 舞台装置も衣装も良かった。欲を言えば、ユーモラスな感じがもう少しあるほうが、メリハリもあって、ラストで盛り上がって衝撃的な幕切れとなり、もっと素晴らしかったような気もした。
 歌詞とメロディのリフレインが多いこのオペラ、テレビで観た時は、ともすれば退屈さもよぎってしまったけれど、生の公演であるためと、ドン・ジョヴァンニのマリウシュ・クヴィエチェンとドンナ・アンナのアガ・ミコライに深く魅了され、聴き慣れたアリアやメロディのオーケストラの演奏も素晴らしかったので、約3時間半、心から堪能できた。



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歌劇 オテロ 新国立劇場 (2012年4月7日) [感動のオペラ]

 作曲=ジュゼッペ・ヴェルディ
 指揮=ジャン・レイサム・ケーニック
 演出=マリオ・マルトーネ
 出演=
 オテロ……ヴァルテル・フラッカーロ
 デズデーモナ……マリア・ルイジア・ボルシ
 イアーゴ……ミカエル・ババジャニアン
 ロドヴィーコ……松位 浩
 カッシオ……小原 啓楼
 エミーリア……清水 華澄
 東京フィルハーモニー交響楽団
 新国立劇場合唱団
          ☆
 2009年10月に新国立劇場で観た『オテロ』の公演より、ずっと素晴らしかった。演出は同じだが、指揮と歌手が違うと、これほど違うのかしらと驚いた。オーケストラの演奏は、力強くてヴィヴィッドでダイナミックだったり、繊細に美しかったりで、時々、歌手の歌声より感情表現が激しく濃密に伝わることもあったが、胸が熱く揺さぶられどおしだった。
 オテロを歌ったヴァルテル・フラッカーロは予想どおり、男性的で力強さに漲る歌声で、愛と嫉妬に苦悩するオテロの心情がよく伝わってきた。デズデーモナを歌ったマリア・ルイジア・ボルシが、期待以上に、もう最高に素晴らしかった。昨年の新国立劇場の『コジ・ファン・トゥッテ』の公演で聴いた時より、ずっとずっと美しく甘く、たおやかで女らしい風情に満ち、情感が深くこめられたアリアと演技に酔わされ感動させられた。第4幕で、夫のオテロに不倫を疑われたまま死んで行く悲しみを歌うアリアを聴いた時は、涙があふれそうになった。
 他のオペラに比べて、『オテロ』は歌手たちが感情表現しやすいオペラに感じられるが、やはり、それぞれの歌唱と演技の個性が出るものとつくづく思った。今年初めて観たオペラの公演、胸を熱くしたまま劇場の外へ出て、生で観るオペラの魅力をあらためて感じた。




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