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灰とダイヤモンド (ポーランド・1958年) [感動させられた映画]

 監督はアンジェイ・ワイダ。
 原作はイェジー・アンジェイエフスキー。
 脚本はアンジェイ・ワイダと、イェジー・アンジェイエフスキー。
 主演はズビグニエフ・チブルスキー。
 第二次世界大戦末期のポーランド。主人公の青年マチェックが、ロンドン派の抵抗組織の中でドイツ軍と闘う姿が描かれる。
 戦争を背景に、生と死を意識しながら信念や思想と共に生きる人間の生命のはかなさ、哀れさが感じられて胸が痛くなるような気分に包まれた。
『地下水道』と同じようにモノクロなので、独特の雰囲気が全編に感じられ、画面の全体だけでなく細部まで、ていねいに撮影されているような気がした。主人公が無残な死を遂げるラストシーンは、特に印象的だった。

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夜霧のしのび逢い (ギリシャ・1963年) [感動させられた映画]

 監督はヴァシリス・ジョルジアデス。
 原作はアレコス・ガラノスの戯曲。
 脚本はアレコス・ガラノス。
 主演はジェニー・カレッティ。
 港町の歓楽街で働く娼婦たちの生きざまと悲哀が描かれる。
 青年ペテロは、エレニと恋人同士で、連日のように遊園地で会っていた。清純な美貌のエレニは自分のことをあまり語らない。しかも、時間がくると帰ってしまう。実はエレナは娼婦だったが、そのことを隠していた。仲間には、少年の恋人がいたり、父親ほどの年齢の船長にプロポーズされたりしている娼婦もいた。やがて公娼制度が禁止され、彼女たちは新たな生活への期待と不安で心が揺れる。
 娼婦を通して女性の本質が描かれているが、特に恋人同士のペテロとエレニの幸せなひとときから、やがて訪れた不幸な瞬間のシーンが印象深かった。
 舞台劇の映画化ということで、その原作と脚本が同じ作家。原作が戯曲だからとは限らないが、この映画は印象に残る感動的なセリフが多い。
 最も胸を打たれたセリフとシーンは――。
 エレニが娼婦だったと知った時のペテロの言葉。
「心から愛した女が、淫売婦だったとは……お前が傍に腰かけ、おれはお前を抱きたくてたまらなかった。だけどお前を傷つけやしないかと怖れ、我慢したんだ。朝になると、夜が来るのが待ち遠しかった。夜はお前の眼を髪を見られる。ただそれだけで、他に何も求めなかった。だがお前は……」
 このセリフである。字幕に一部、不満の箇所もあるが、純情青年が呟くこのシーンは、胸が熱くなるほど感動的だった。


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サイダーハウス・ルール (アメリカ・1999年) [感動させられた映画]

 監督はラッセ・ハルストレム。
 原作と脚本はジョン・アーヴィング。
 主演はトビー・マグワイアと、マイケル・ケイン。
 主人公のホーマーは孤児院で生まれたが、院長ラーチによって医術を学び、外の世界に憧れて、リンゴ園で働く。リンゴを収穫する労働者の宿舎『サイダーハウス』で暮らすが、軍人の友人が出征後、その婚約者と親密に。『サイダーハウス』で、医術を生かし、不幸な女性を救ったり。やがて、戦地で負傷した友人が戻って来ると、恋人は彼への愛を打ち明け、2人は別れる。ホーマーはふたたび孤児院に戻り、人々を救う立派な医師となる。
 主人公の青年のキャラクターがとても素晴らしかった。恩のある院長ラーチとの関係。孤児院の外の世界への憧憬。サイダーハウスでのリンゴ収穫の仕事や、恋人とのひととき、仲間たちのトラブル解決、不幸な少女を救うための必死の堕胎手術。
 もちろんラッセ・ハルストレム監督の感性と才能だが、原作者が書いた脚本のためもあり、感情を揺さぶられるシーンの描き方が自然で、ていねいで、特にラストは涙があふれそうなほど感動した。
 エーテル中毒の院長ラーチの役を演じたマイケル・ケインも適役で、印象に残った。


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ミス・ブルターニュの恋 (フランス・2013年) [感動させられた映画]

 監督と脚本はエマニュエル・ベルコ。
 主演はカトリーヌ・ドヌーヴ。ミレーヌ・ドモンジョも出演。
 主人公はレストランの経営者で熟年女性のベティ。19歳の時、ミス・ブルターニュに選ばれたほどの美貌の面影があり、熟年というより初老に近い現在でも男性を惹きつける魅力がある。仕事と私生活のストレス発散に、1人でドライブの旅に出て、バーで知り合った若い男性客と、一夜のベッドを共にする。ドライブを続ける途中、微妙な関係の一人娘からの依頼で、幼い男の子の孫を、娘婿の実家へ連れて行くことになる。生意気で反抗的な孫を、ようやく目的の家へ連れて行き、初めて会った娘婿の父と恋に落ちてしまう。
 さすがフランス映画と感動してしまうような映画である。撮影時、69歳のドヌーブは、少し肉付きのいいことを除けば、充分に美しい。若い日にミス・ブルターニュだった役にも説得力がある。しかも74歳の女性役で、若く見えるドヌーブが実際より年下の主人公の役ではなく、実際より年上の、正確には老け役の74歳の女性役で行きずりの男と一夜を過ごすし、真剣な恋もする、という話で、少しの違和感もない。もちろん伏線として若い日にミス・ブルターニュだったという設定が生かされているわけだが、まさにフランスは恋の国、芸術の国、自由の国である。フランス以外の国では成立しないというか撮影されない映画と言えると思う。もちろん現実には、あり得ないことではなく、熟年以上の男女の恋もセックスも、最近の日本では盛ん(!)で、その世代のホテル利用者も増加している状況らしい。
 それにしても、この映画で熟年女優カトリーヌ・ドヌーヴに失望しなくて良かったという安堵、美しく撮影されていて良かったという安堵、実際に実年齢より若く美しいに違いないと信じられて、その意味では、ストーリーのもの足りなさはともかく素晴らしい映画だと思った。
 さらに、私の大好きな映画ベスト3と言っていいほどの感動的な映画『ローマの恋』の主役ミレーヌ・ドモンジョが、やはりミス・ブルターニュに選ばれた一人という役で出演している。この映画撮影時78歳で、少し肉付きのいいミレーヌ・ドモンジョ。(『ローマの恋』撮影時は25歳。)ミス・ブルターニュだった役というキャラクター設定があるにしても、まだ女の色香が残る容姿である。
 若さを失っても2人のフランス女優の魅力は失われていないし、失望もさせられなかったことに感動した映画だった。
 脚本も書いたエマニュエル・ベルコ監督は女優でもあるが、やはり男性の監督とは違う、女性独特の感性でカトリーヌ・ドヌーヴとミレーヌ・ドモンジョを美しく魅力的に撮影することに成功した映画だと思った。

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エヴァの告白 (アメリカ/イギリス・2013年) [感動させられた映画]

 監督と脚本はジェームズ・グレイ。
 主演はマリオン・コティヤール。
 主人公のエヴァは、1921年の戦火のポーランドから、妹と2人でアメリカへ逃れて来た。入国審査で、妹は結核療養所へ入れられ、エヴァは強制送還されそうになるが、中年紳士風のブルーノに救われて、彼の住まいへ。ブルーノは移民女性たちを集めては、劇場で踊らせたり売春を斡旋してお金儲けをしている男だった。
 エヴァはカトリックのクリスチャン。両親を亡くし、たった1人の妹が心の支え。療養所から妹を救い出す費用を貯めるために、ブルーノの言うなりになるしかなかった。頼った叔母夫婦は、そのことを知ってエヴァに冷たくなる。やがて、エヴァを愛する青年が現れ、この地を離れてメキシコヘ行こうと誘ってくれる。けれど、エヴァを監禁する従兄のブルーノを銃殺しようとして、逆に殺されてしまう。
 見応えのある映画だった。戦時中の若いポーランド女性の悲惨な話だけでなく、エヴァが辛い日々に、ひたすら妹を想う気持ちや、耐えがたい売春行為をする決意など、心の葛藤が伝わってきて胸が熱くなる。戦時中、女性が生き延びるために身体を売ることは決して悪いことでも汚れた行為でもないと、そう感じさせられる映画は少なくないが、この映画もそうだった。
 また、エヴァと青年とブルーノの三角関係も、ラスト近くでスリリングなストーリー展開が感動的。ブルーノは最初からエヴァを愛していたが、愛されるはずはないと彼女を苦しめたと知った時の驚き。
 悲しい結末にならないようにと思いながら観ていたら、ブルーノのお陰で、エヴァが療養所から妹を連れ出してメキシコヘ向かう船に乗ることができるシーンで、救われたような気分になった。
 主役のフランス人女優マリオン・コティヤールも、他のキャストたちも、皆、良かった。アメリカとイギリスの合作映画ということだが、イギリス映画に近い感じ。脚本も書いたジェームズ・グレイ監督は、ユダヤ系アメリカ人で、現在46歳。5本の作品を監督・脚本したということだが、他の映画も観てみたいと思った。

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やさしい本泥棒 (アメリカ/ドイツ・2013年) [感動させられた映画]

 監督はブライアン・パーシヴァル。
 原作はマークース・ズーサック。
 脚本はマイケル・ペトローニ。
 主演はジェフリー・ラッシュと、ソフィー・ネリッセ。
 ナチス政権時代のドイツ。9歳の少女リーゼルは、生き延びるために母と別れて里子に出される。里親の父となったハンスが、字を読めなかったリーゼルに、読み書きを教える。リーゼルは本を読む楽しさを知り、ナチス政権の焚書が行われた後も、ひそかに本を読み続けて生きる希望を見出していく。
 胸が熱くなるような、感動的な映画だった。戦時中の抑圧された生活や、亡くなった弟を想い続けるリーゼルのやさしさ、ナチス政権に対する反発、反ユダヤ主義など当時の歴史に翻弄される暮らしの中で、純真な愛が生まれ、必死に生きる人々のせつない気持ちなどが伝わってきた。
 里親役のジェフリー・ラッシュ始め、キャストが皆、適役で良かった。特にリーゼル役の、フランス系カナダ人女優ソフィー・ネリッセが、とても素晴らしかった。清純な美少女の魅力だけでなく、少女独特の豊かな表情の演技が印象深かった。
 原作のマークース・ズーサックはオーストラリア出身の40歳。本を読んでみたいと思ったが、中古本しか売っていない。
 監督のブライアン・パーシヴァルについての情報がないのが残念。
 もう1度観たいほど感動させられる映画を、久しぶりに観たと思った。


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メビウス (フランス・2013年) [感動させられた映画]

 監督と脚本はエリック・ロシャン。
 主演はジャン・デュジャルダンと、セシル・ドゥ・フランス。
 証券会社で働く有能な女性ディーラーのアリスは、ロシアの国家機密情報員モイズから注目され、スパイとして雇われる。アリスは自分を雇った人間がモイズと知らないが、モイズは知っていて告げないまま、2人は恋に落ちてしまう。
 タイトルの『メビウス』は、 表と裏が繋がっているメビウスの輪のことでストーリーに関連している。
 久しぶりにフランス映画らしい映画を観た。スパイ・サスペンスというより、感動的なラブ・サスペンスだった。特にラブシーンは、もう、胸が甘く、せつなく、心身が熱く揺さぶられるようだった。
 サスペンスやミステリーやアクションやコメディに、〈ラブ〉が付いても、恋が全く感じられない、取って付けたようなラブ挿入お粗末ストーリーの現代映画が多い中で、この映画は本物の恋が描かれたフランス映画と感じた。アリスとモイズのラブシーンを観ながら、胸がときめいたり、せつなくなったり、経験した恋と重なったり、甘美な恋の追想をよみがえらせたり――。
 サスペンスのストーリーも面白かった。スパイの話は類型的になりがちだが、謎の作り方にサスペンスフルな面白さがあってハラハラドキドキさせられた。
 演じている男女のキャストが、とても良かった。フランス出身の俳優、撮影時41歳のジャン・デュジャルダンが、この上なく男っぽくセクシーで魅了されてしまった。相手役のベルギー出身の女優、撮影時38歳のセシル・ドゥ・フランスも、知的な美しさと、大人の女性の可愛らしさが感じられた。2人とも、特にまなざしで、恋している表情が最高にいい。
 ベッドシーンも素晴らしく、感情移入と感覚移入し過ぎて心身が熱くなり、映画を観ているのを忘れかけるほどだった。ベッドでアリスがモイズの腕の中に抱かれて幸福そうなシーンも、印象的だった。
 監督と脚本の、才能と感性の素晴らしさを感じさせられる、撮影時54歳のエリック・ロシャン。DVDを買って、もう1度観たい映画、さすがフランス映画と感動する映画を久しぶりに観たような気がした。


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あるスキャンダルの覚え書き (イギリス・2006年) [感動させられた映画]

 監督はリチャード・エア。
 脚本はパトリック・マーバー。
 主演はジュディ・デンチと、ケイト・ブランシェット。
 主人公は、中学校の歴史教師で中高年シングル女性バーバラ。生徒たちに厳しく、同僚たちからも敬遠されている。新たに赴任して来た美しい女教師シーバに心惹かれ、日記に書きながら彼女への想いが昂ぶっていく。シーバには、年上世代の夫と、多感な娘とダウン症の息子がいて、平穏で幸福な暮らしぶりだが、心身が満たされていなかった。大人びた男子生徒と学校の美術教室で肉体関係を持ってしまい、それを窓からバーバラに目撃されてしまう。シーバは男子生徒への愛と欲望を自制できず、家庭は破局。学校からも世間からも批判を浴び、夫から家を出るよう言われ、バーバラの家で同居。彼女の留守に日記を読んだことから、自分への異常な感情に気づき、愕然とする。
 続けてもう1度観たくなるほど、感動させられた映画だった。
 学校では美人教師として注目を浴び、家庭では良妻賢母。けれど、心の奥に満たされないものがあり、少年との愛欲に走ってしまうシーバ。
 そんな彼女に同性愛的な想いを寄せ、毎日、日記に書き続けて胸をせつなくさせているバーバラ。
 バーバラは未婚だが、若いころから同性が好きだったのではなく、男性と付き合うチャンスがなかった。ある日の日記に、バスの運転手の手が一瞬、触れた時、胸がときめいた、心がふるえたと過去を振り返る記述がある。本当は、異性に触れられたかった、恋がしたかったのだ。若さを失ってから恋を諦め、接触しやすい同性に特別な想いを寄せるようになった。その対象はシーバが初めてではなく、前の学校でも執拗に付きまとった女性がいた。
 ――人は皆、相容れない相手と何年もムダに過ごす。“理想の伴侶を見つけた”と信じたいから。真実を見極めるのは勇気がいるの。――
 バーバラはシーバに、偽りの結婚と自覚させるような言葉で唆(そそのか)す。
 ――この家庭を壊したいなら、少年ではなく、大人の男と浮気しろ!――
 夫は、かつての教え子だった妻に、裏切られた憤りの言葉を浴びせる。15歳の少年と女教師の関係が、マスコミにも知られ、家庭を大事にしていた夫は、妻を激しく憎悪する。
 年齢の離れた年上の夫。年齢の離れた年下の少年。どちらもシーバにとっては、純愛のつもりだった。
 ――何故、快楽を味わってはいけないの――
 と、シーバは呟くけれど、決して性的な欲望を満たすためだけではなかった。何故なら、遊びだったつもりの少年から捨てられた時、シーバは愕然とする。
 純愛か、快楽か。抱かれたいと恋い焦がれても、純愛かもしれない。または、快楽を求めてかもしれない。そのどちらなのか、自分でもわからないかもしれない。たとえ言葉を口にしてもだ。女の心と肉体に秘められた宿命――のせいのような気がする。
 ラスト近く、年上の夫は妻に言う。
 ――きみの性格は、よくわかっていた。いつか、こうなる日が来ると覚悟はしていた。きみは、いい母親だ。だが、妻としては時に最悪だった。何故、私を頼らなかった? 「孤独よ。助けて」と、一度も言ってくれなかった。冴えない男だけど、きみの傍にいたのに――
 このセリフ、このシーンで、私は涙が止まらなくなった。それは絶対、夫には、男性には、理解できない、心の奥で絶えず揺れる小さな炎みたいなもの。夫がいても、家庭があっても、孤独で、満たされなくて、何かを求めたい妻の気持ち――。
 もう過ぎ去った過去の日々の、ある一時期がよみがえってくるようで感情移入し過ぎてしまい、涙があふれそうだった。
 ケイト・ブランシェットの妻役も良かったし、夫を演じたキャストも良かった。
 何より、ジュディ・デンチ主演映画で、この映画が一番、適役中の適役に感じられた。


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水曜日のエミリア (アメリカ・2009年) [感動させられた映画]

 監督と脚本はドン・ルース。
 原作はアイアレット・ウォルドマン。
 主演はナタリー・ポートマン。
 主人公は新人弁護士エミリア。事務所の上司ジャックと恋に落ちて妊娠。ジャックは、医師の妻と、8歳の息子がいたが、協議離婚。エミリアは、夫の息子ウィリアムと微妙な関係。ウィリアムは別れた父と母の家を行き来していて、毎週水曜日、泊まりに来る。ジャックの元妻は、別の男性と再婚。
 エミリアは、出産した赤児の突然死の悲しみが癒えず、夫にも継子にも、素直に愛情表現できない。生まれたばかりの我が子の死についての秘密を、夫に告白し、一人で生きて行く決心をして家を出る――。
 主人公の人物像と内面が、深く濃密に描き出されていて、現代アメリカ映画と思えないような素晴らしい映画だった。予想外のストーリー展開やキャラクター設定など、脚本がよく練れているというか、洗練されているというか、才能ある脚本家と感じていたら、ドン・ルース監督の脚本であることを、観終えてから知った。ドン・ルース監督は、監督作品より、脚本の映画のほうが多いことも知って、道理でと思った。原作の面白さもあると思うが、やはり脚本と監督で、これほど素晴らしい映画作品になったのだと思った。
 ファーストシーンで主役のナタリー・ポートマンを見た時、現代アメリカにこんな魅力的な女優がいたのと驚いた。ヨーロッパ系アメリカ人かもと思って調べたら、ユダヤ系だった。女優らしい女優、本物の女優、才能ある女優という感じがした。容姿の美しさだけでなく、表情がとてもいい。演技し過ぎないのである。キャラクターの内面を、さりげなく表現している感じがする。その内面を観客に想像させる余地を残すような演技をする俳優が私は好きだが、ナタリー・ポートマンはその才能があると思った。
 感性豊かな女性であるエミリアのキャラクターは興味深い。夫から、ウィリアムを見る眼が冷たいと言われるが、本当は愛している。また、母を捨てて女に溺れた父を、激しい憎悪から罵倒し侮蔑の言葉を浴びせるが、本当は父を愛していることに気づかない。
 ラスト近くで夫がエミリアに、「きみは愛する人間に厳し過ぎる」と言う。その言葉が、印象に残った。クライマックスは、ずっと胸に秘めてきた、誰にも語れなかった悲しい秘密を、エミリアが夫に告白するシーン。このシーンで、私は涙が止まらなくなった。あれは、本当は突然死ではなかった、愛する我が子を、初めて産んだ赤ちゃんを、私が死なせてしまった、私が殺してしまったとエミリアが泣き叫ぶシーンである。我が子の死だけでなく、その原因に、涙があふれ続けて止まらなくなったのだ。
 若い母親、初めての育児、隣に夫が寝ているベッドで赤ちゃんを胸に抱いたまま、ベビーベッドに寝かせていたら起きなかった悲劇、出産後の身体は睡眠を欲している時刻、我が子に死が訪れるなんて夢にも思わない幸せな眠り、出産後の女性の本能、身体の自然な欲求――。何十年も昔の経験が、ふと蘇ってくるようだった。
 エミリアは自分を責めて責めて責め抜いて、突然死した赤ちゃんという偽りを、ひとりで胸の奥に秘めて生きてきた。けれど――。
 それはエミリアの思い違いで、やはり突然死だったと医学的に証明した人間がいる。夫を奪ったエミリアを憎み、女としても母としても、あれほど激しく対立していた、夫の元妻だった。エミリアに愛を感じている継子のウィリアムが、その告白を盗み聞きして、母親に迫ったのだった。「ママは医者なんだから、義妹の突然死を証明してよ!」と。
 突然死を医学的に証明された真実。それでもエミリアの心は、救われたわけではないかもしれない。夫の家を出て一人で生きようとする決心は変わらなかった。
 その後、再会した夫と、愛の生活をやり直すのか、または友人のような、いい関係を続けるのか、観客に想像させるような結末の、そのラストシーンも最高に素晴らしく、感動の余韻がずっと残る映画だった。


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カティンの森 (ポーランド・2007年) [感動させられた映画]

 監督はアンジェイ・ワイダ。
 原作はアンジェイ・ムラルチク。
 脚本はアンジェイ・ワイダ、他。
 主演はマヤ・オスタシェフスカ。
 第2次世界大戦中、ソ連とドイツの占領下、ポーランド軍将校たちがカティンの森で虐殺された事件と、アンジェイ大尉の妻アンナの必死な生き様が描かれる。
 アンジェイ・ワイダ監督80歳を過ぎての作品。原作『カティンの森』は、映画の原作として書かれたので、原作の映画化ではないということ。また、アンジェイ・ワイダ監督の父はポーランド軍大尉で、カティンの森で処刑されたということである。
 暗くて悲惨な映像シーンが多く、観ているのが辛くなるような気がする映画だった。けれど最後まで惹きつけられて観てしまうのは、アメリカやフランスの戦争映画と違う描き方と感じるためかもしれなかった。戦争の不条理さや悲惨さ、絶えず生と死を意識させられる日々の連続。強大な権力と支配、人間の存在、肉親への愛、その生命、運命、宿命──。それらが短い会話のやり取りや絶望的で暗澹としたストーリー展開や人間描写や、暗くて重い映像と音楽から鮮烈に伝わってくる。アンジェイ・ワイダ監督の独特の撮影、独特の世界が随所で感じ取れるような気がした。
 ラスト近くで、アンナの甥である一途な青年が、若い娘とデートの約束をした直後、警察車に轢殺されてしまうシーンや、カティンの森の中に掘られた穴の前でポーランド軍将校たちが1人ずつ、祈りの言葉を口にしながら後頭部に銃弾を向けられ処刑されるシーンは、胸が痛く締めつけられるほど衝撃的だった。

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