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グランド・ブダペスト・ホテル (イギリス/ドイツ・2014年) [面白かった映画]

 監督と脚本はウェス・アンダーソン。
 主演はレイフ・ファインズ。
 一流ホテルだが現在は利用客が減少したグランド・ブダペスト・ホテル。休暇中に宿泊した作家が、若い日にベルボーイをしていたゼロ・ムスタファから、ホテルに秘められた謎を明かされる。
 イギリスとドイツの合作ということだが、そのどちらとしても、ちょっと不思議な、変わったムードの映画だった。
 イギリス俳優レイフ・ファインズは、好きな俳優だが、こういう映画でも持ち味がちゃんと生かされていて感心させられた。宿泊客のマダムたちに人気で、ベッドの相手も忙しいコンシェルジェというのが、面白おかしく適役の演技。
 そのグスタヴから、友達と言われ兄弟とも言われるほど信頼されるベルボーイのゼロを演じたF・マーレイ・エイブラハムも、個性的で味わいのある俳優。
 コメディ・タッチではあるけれど、ストーリーはシリアスな、ミステリー・コメディというジャンルで、新鮮な面白さがあった。

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歌劇 オテロ (新国立劇場 4月19日) [感動のオペラ]

 指揮=パオロ・カリニャーニ
 演出=マリオ・マルトーネ
 作曲=ジュゼッペ・ヴェルディ
 原作=ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『オセロ』
 出演=
 オテロ……カルロ・ヴェントレ
 デズデーモナ……セレーナ・ファルノッキア
 イアーゴ……ウラディーミル・ストヤノフ
 ロドヴィーコ……妻屋秀和
 カッシオ……与儀巧
 エミーリア……清水華澄
 ロデリーゴ 村上敏明
 他
 東京フィルハーモニー交響楽団
 新国立劇場合唱団
          ☆
 15世紀末。ヴェネツィアの将軍オテロはアフリカ出身の黒人ムーア人。トルコ艦隊を撃破し、キプロス島の総督に就任。旗手のイアーゴは、カッシオを副官にしたオテロを憎悪。悪巧みによって、オテロの美しい妻とカッシオの浮気をオテロに吹き込み、妻への深い愛と自身のコンプレックスから生じる嫉妬を煽り立てる。オテロは妻に裏切られたと思い込み、嫉妬と憤りから殺害。侍女エミーリアの証言でイアーゴの奸計と知り、自害する。
 久しぶりに生のオペラを観た。『オテロ』は私の好きなオペラのベスト10の中の1本。原作のストーリーの面白さ。登場人物たちの際立ったキャラクター。テノール、ソプラノ、バリトンのそれぞれのアリアに、力強さ、悪の宿命、愛の哀しみ、死と祈り、自制できない人間の心の動きなど、深く感情移入しながら聴ける、飽きさせられないオペラだからである。
 初めて『オテロ』をDVDで観た時、オテロを歌って演じたプラシド・ドミンゴに深く魅了された。新国立劇場で『オテロ』を観るのは、3回目。前回の2012年の公演と同じ演出だが、カーテンコールの拍手を終えて席を立った時、不完全燃焼気味の気分に包まれた。オテロを歌ったカルロ・ヴェントレは張りがあって伸びやかで力強くて素晴らしいテノールだった。デズデーモナを歌ったセレーナ・ファルノッキアも美しいソプラノだった。イアーゴのバリトンも悪くはなかった。けれど――。
 それぞれのキャラクターの情感が、私の心に濃密に伝わってこないような気がした。もっとキャラクターの個性を生かしたオーバーな演技と言っていいくらいの迫力があったら、全体にもっと盛り上がって素晴らしかったような気がした。
 私が一番好きな第4幕のデズデーモナの寝室が、もの足りなかった。ベッドか、カーテンか、衣装か、ロマンティックな何か1つでもあって欲しかった。終幕に至る大事なシーンだし、もっと工夫して欲しかった。
 5年前に新国立劇場で観た『オテロ』を思い出す。水路など舞台セットに多少の違和感はあっても、それが気にならないほど、とても素晴らしかった。将軍のオテロは男らしくたくましく妻への愛に満ち、嫉妬と妄想に狂乱。イアーゴは悪の権化と宿命の哀しみ、デズデーモナはこの上なく清純で夫を愛し神のもとに召される美しい覚悟。それらが伝わってきて、とても素晴らしく感動的なオペラだった。
 感情移入し過ぎたあまり、デズデーモナが夫に殺される予感と、夫への愛と、そして神への祈りを表現したような『柳の歌』と『アヴェ・マリア』を聴きながら、涙があふれて止まらなかった。今回、涙は少しで、5年前の時の10分の1ぐらい。1日のうちに何度か情緒不安定な時間がおとずれる、現在の私の心境のせいも、あるかもしれない。
 ともあれ、久しぶりに生のオペラを観たことの満足感には包まれた。


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