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あるスキャンダルの覚え書き (イギリス・2006年) [感動させられた映画]

 監督はリチャード・エア。
 脚本はパトリック・マーバー。
 主演はジュディ・デンチと、ケイト・ブランシェット。
 主人公は、中学校の歴史教師で中高年シングル女性バーバラ。生徒たちに厳しく、同僚たちからも敬遠されている。新たに赴任して来た美しい女教師シーバに心惹かれ、日記に書きながら彼女への想いが昂ぶっていく。シーバには、年上世代の夫と、多感な娘とダウン症の息子がいて、平穏で幸福な暮らしぶりだが、心身が満たされていなかった。大人びた男子生徒と学校の美術教室で肉体関係を持ってしまい、それを窓からバーバラに目撃されてしまう。シーバは男子生徒への愛と欲望を自制できず、家庭は破局。学校からも世間からも批判を浴び、夫から家を出るよう言われ、バーバラの家で同居。彼女の留守に日記を読んだことから、自分への異常な感情に気づき、愕然とする。
 続けてもう1度観たくなるほど、感動させられた映画だった。
 学校では美人教師として注目を浴び、家庭では良妻賢母。けれど、心の奥に満たされないものがあり、少年との愛欲に走ってしまうシーバ。
 そんな彼女に同性愛的な想いを寄せ、毎日、日記に書き続けて胸をせつなくさせているバーバラ。
 バーバラは未婚だが、若いころから同性が好きだったのではなく、男性と付き合うチャンスがなかった。ある日の日記に、バスの運転手の手が一瞬、触れた時、胸がときめいた、心がふるえたと過去を振り返る記述がある。本当は、異性に触れられたかった、恋がしたかったのだ。若さを失ってから恋を諦め、接触しやすい同性に特別な想いを寄せるようになった。その対象はシーバが初めてではなく、前の学校でも執拗に付きまとった女性がいた。
 ――人は皆、相容れない相手と何年もムダに過ごす。“理想の伴侶を見つけた”と信じたいから。真実を見極めるのは勇気がいるの。――
 バーバラはシーバに、偽りの結婚と自覚させるような言葉で唆(そそのか)す。
 ――この家庭を壊したいなら、少年ではなく、大人の男と浮気しろ!――
 夫は、かつての教え子だった妻に、裏切られた憤りの言葉を浴びせる。15歳の少年と女教師の関係が、マスコミにも知られ、家庭を大事にしていた夫は、妻を激しく憎悪する。
 年齢の離れた年上の夫。年齢の離れた年下の少年。どちらもシーバにとっては、純愛のつもりだった。
 ――何故、快楽を味わってはいけないの――
 と、シーバは呟くけれど、決して性的な欲望を満たすためだけではなかった。何故なら、遊びだったつもりの少年から捨てられた時、シーバは愕然とする。
 純愛か、快楽か。抱かれたいと恋い焦がれても、純愛かもしれない。または、快楽を求めてかもしれない。そのどちらなのか、自分でもわからないかもしれない。たとえ言葉を口にしてもだ。女の心と肉体に秘められた宿命――のせいのような気がする。
 ラスト近く、年上の夫は妻に言う。
 ――きみの性格は、よくわかっていた。いつか、こうなる日が来ると覚悟はしていた。きみは、いい母親だ。だが、妻としては時に最悪だった。何故、私を頼らなかった? 「孤独よ。助けて」と、一度も言ってくれなかった。冴えない男だけど、きみの傍にいたのに――
 このセリフ、このシーンで、私は涙が止まらなくなった。それは絶対、夫には、男性には、理解できない、心の奥で絶えず揺れる小さな炎みたいなもの。夫がいても、家庭があっても、孤独で、満たされなくて、何かを求めたい妻の気持ち――。
 もう過ぎ去った過去の日々の、ある一時期がよみがえってくるようで感情移入し過ぎてしまい、涙があふれそうだった。
 ケイト・ブランシェットの妻役も良かったし、夫を演じたキャストも良かった。
 何より、ジュディ・デンチ主演映画で、この映画が一番、適役中の適役に感じられた。


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