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恋人たち (フランス・1958年) [陶酔させられた映画]

 監督は、ルイ・マル。
 原作は、バロン・ド・ドミニク・ヴィヴァン・ドノン。
 脚本は、ルイ・マルとルイ・ド・ヴィルモラン。
 音楽は、ヨハネス・ブラームス。
 主演は、ジャンヌ・モロー。
 ルイ・マル監督の2作目の映画。初めて、この映画を観た時の衝撃は、忘れられない。
 私が観たジャンヌ・モローの出演の映画で一番好きな作品。ジャンヌ・モローの魅力が最も感じられる映画である。ただ美しいとか、表情や演技が素晴らしいとかいうだけではない。ジャンヌ・モローが演じている人妻のキャラクターによって、表現されている女性の性(さが)とか本質などに強く魅かれるせいもあるかもしれない。
 ジャンヌ・モローの魅力だけではなく、原作の良さもあり、テーマ音楽として流されるブラームスの曲の魅力もあり、何より、脚本も担当したルイ・マル監督の感性と才能の素晴らしさにほかならないと、私には感じられる。まだ20代半ばという若さのルイ・マル監督が、成熟した人妻と考古学者の青年との恋を、これほど濃密にリアルに描くなんて信じられないと言いたくなるほどの驚き。恋を、愛を、女の心理を、男の心理を、熟知していなければ制作できないのではと思われるような、男女の心理ラブ・ロマンス、と定義したくなる世界──。
 ジャンヌ・モローが演じるのは、地方の新聞社主の妻。愛のない結婚生活に耐えられないように、月に2度、パリへ出かけては女友達や浮気相手と刺激的なひとときを過ごしてくる。夫は妻の裏切りに気づいていて、妻の交際相手の男女を自宅に招待する。その日、帰宅の途中、彼女は車が故障し、助けを求めた青年考古学者とめぐり逢う。
 その青年考古学者と恋に落ちて、情熱的な一夜を共にし、女として生まれ変わり──。
 ブラームスの甘い調べの曲が流れ続け、静まり返った夜の庭を、抱き合いながら散策する人妻と青年考古学者のラブシーンが最高に美しいのである。
 2人は何度も、唇を激しく重ねて……。
 揺れるボートの中での、抑えられない愛撫に身をゆだねて……。
 愛の言葉はなく、互いの名を呼び合うだけで燃え上がり……。
 言葉で言い表せないほどのフランス映画のラブシーンの美しさに、ため息が出るほどである。
 翌日、2人は新たな人生に向かって出発するが、その時の男女の心理描写のリアルさが、いかにもフランス映画らしいのである。
 走る車の中で、幸福そうに寄り添う姿。恋の歓喜と快楽の夜が明けた、朝の光の中。男も、女も、鏡が眼に触れる。甘美な夢から覚めたように、ふと現実世界がそこにあるのに気づく。同時に、愛し始めたばかりの相手に微笑む。愛の視線を交わす。空腹を感じ、レストランに入る。食事をして、地図を広げて……。女は、ふと壁の鏡を見る。不思議そうに。自分自身を。そして恋人と寄り添い、店を出ると、車に乗り込んで──。
 そして、多分、原作にある文章の朗読が流れる。
 ──最初の夜の幸せが再びあるだろうか。夜明けの危険な時間に、早くも彼女は自分を疑っていた。彼女は不安だったが、後悔はしなかった。──

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